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バベルタワーのてっぺんで

メリル(Eno.52)が冒険している様を観客席から眺めているるクマヘッドとゼウ子があーだこーだ文句言ったり記録したり落書きしたりおっぱいおっぱい騒ぐ場所。

2024/11/21 (Thu)

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2007/03/20 (Tue)

19日目日記退避

(そのままコピペしただけザマス)
(後日過去ログと共に整形したのアップする予定だけど何時になるやら)


【メリル】
「くっ……っは……っ」


メリルは小刻みな呼吸を繰り返し、剣を杖代わりに前を睨み付けた。
その視線を平然と受け流しながらアリシアは浅い溜息を返す。

戦況は完全な硬直状態。
飛びかかる度にいなされ、体力だけを奪われたメリルは、一手一手を流される度に長考にふけるよう姿勢を変えた。

これが――本当の意味での実戦なら、その時点で負けが確定するが。

その事に意識が向かない程、メリルの頭は混乱のるつぼに陥り、乱れきっていた。


【アリシア】
「…………」


そんなメリルの様子に……アリシアも、内心に焦りを抱いていた。
今のメリルの状態ではどれだけ動きを止めた所で身体が休まるはずが無い。

焦りと緊張、脳裏を支配しているだろうそれが、休息さえも阻害する。
それを注意した所で、彼女が素直に休むとも思えない。

身体に負担をかける事は……あまり宜しい事ではない状況だ。
かといって、戦闘を放棄する事も、彼女を戦闘不能にする事も……。


戦況は完全な硬直状態。


【瑞奈】
「――アリシアっ!」

【アリシア】
「っと……戻りましたか、レイファスは……っ」

【メリル】
「え……」


それを打ち砕いたのは、アリシアの待ち望んでいた瑞奈の帰還。
そして……二人のどちらもが予測していなかった、もう一人の……。


【瑞奈】
「ごめん、銀十字は捕まらなくて……よく分かんないけどぽややんってしてる自信満々な女連れてきたわ」

【??】
「あはは……なんだか酷い言われようですね、私……」

【アリシア】
「…………いえ、最良の援軍ですよ」

【??】
「お久しぶりです、お変わりないようで何よりです」

【アリシア】
「貴女ほどではありません、私の場合時間軸がずれているだけですよ」


【瑞奈】
「え、知り合い?」


【??】
「……メリル、久しぶり……ええ、久しぶりですね、メリル」

【メリル】
「ママ……」

【瑞奈】
「はあっ!?」


新たなる来訪者の存在だった。

 


第十六話
二人のメリル-会いたかったと告げる声-

 


【瑞奈】
「え、あ、ちょま、まっ! んなあーっ!?」

【アリシア】
「瑞奈……もしかして、知らずに連れてきたのですか?」

【瑞奈】
「し、知らないわよそんな! 何も言われなかったし!」

【??】
「瑞奈さん、で宜しいですか? お名前が分からないのでどうしようかと……」

【アリシア】
「……貴女、まさか自分の名前さえ伝えてなかったとか……」

【瑞奈】
「だ、だって! ちょっと道聞くつもりで声かけたし、こうなるとは夢にもっ!? か、片岡瑞奈っ、瑞奈でいいわっ」

【エリス】
「はい、エリス=シルバークロスです……いつもメリルがお世話になってます」

【瑞奈】
「アリシアーっ! もしかして私からかわれてないっ!? てかちょっと待った! 幾ら何でも無理がっ、若作りってレベルじゃねーわよ!?」

【エリス】
「あはは、素敵なリアクションです……隠しておいた甲斐がありますよ」

【瑞奈】
「そういう問題!? てかアンタ幾つだっ、幾つの時の子だメリルー!?」

【エリス】
「女性の歳は詮索しな……」

【アリシア】
「……十八、でしたね、確か私と同い年だった記憶がありますので」

【エリス】
「あ、アリシアさん……」

【瑞奈】
「三十路!? うそぉ!?」

【エリス】
「あはは……えっと、そこはホラ、血、と言うことでなんとか」

【瑞奈】
「天使の方!? 悪魔の方!? てか私もなる、私も人間止めるわジョジョー!」

【アリシア】
「……別に背が伸びたりはしませんよ、瑞奈」

【瑞奈】
「誰も背の話はしてないっ、しばくわよ!」

 

ぎゃあぎゃあと喚く瑞奈と淡々と流すアリシアに小さく会釈。
エリスは、二人から目を逸らすと……理解できない状況に硬直したメリルに、微笑を向けた。


【エリス】
「……やっと会えましたね、メリル」

【メリル】
「…………」

【エリス】
「いつか会えるって、信じてました……こんな形で会うのは想像して無かったけど」


その声に、瑞奈とアリシア……主に瑞奈が騒ぐのを止め、辺りが静けさを取り戻す。
メリルは視線を泳がせ、戸惑いの声を漏らしながら、剣を握っている事も忘れ力を抜いた。

がしゃん、と。
響き渡る金属音……その音に我を取り戻したのか、一拍の間を起き一吠え。


【メリル】
「う……ウソだっ!!」

【アリシア】
「メリル?」

【メリル】
「ウソだよ……だ、だってママ、一度も私に声なんかっ、名前だってくれなかったもん、ウソだよ!!」

【エリス】
「ええ……私にとっては、二人とも大切な『メリル』ですもの」

【メリル】
「え、ぁ……う……」

【エリス】
「それに……推測でしか無いのですが、メリルも他の名前で呼ばれるのは嫌でしょう」

【エリス】
「……私は、もう一人の自分を別の名で呼びました、それが嫌だったと知ったのは……少し、遅すぎて」


一瞬、過去を追想するように俯き……。
戻した視線で、慈しむように微笑みながら。


【エリス】
「メリル……私だけじゃなくて、パパだって、貴女のことを気にしているんですよ」

【メリル】
「えっ……」

【エリス】
「なんとか貴女を……いつか出会うだろうメリルの為にって、色んなコトを試して」

【エリス】
「でも、人形作製師の力だけはどうしても戻らないって……今は古代の遺産を頼りに、色々な遺跡を巡っています」

【エリス】
「ほら、すぐ居なくなっちゃうでしょ、パパは」

【メリル】
「う、あ……そ、それは……」


そういえば……年に数回、パパが居なくなる事があって……。
いつもお土産を沢山持ってくるから、何処かに遊びに行ってるんだって、私も……あの子も思ってた。

メリルは思い返すよう頭に手を当てながら、一歩……何かから退くように後ずさり。


【エリス】
「……メリル、身体は大丈夫ですか? 痛い所……頭痛は、ありませんか?」

【エリス】
「無いならママとお話ししましょう……貴女のこと、聞かせて貰えたら嬉しいな」


ずっと、自分は疎まれるだろうとと思ってた。
みんなの前から『あの子』を奪う自分は、きっと嫌われるはずだと覚悟してた――。

剣を手に取り、構え直す。
切っ先を前へ向け……震える手で必死に、握りしめる。


【メリル】
「……っ!!」

【瑞奈】
「メリル!?」

【メリル】
「う……ウソだよ、ウソだよっ!!」

【メリル】
「ママだって私を消すつもりなんだっ、ママも、あの子の方がイイって言うつもりなんだっ!!」

【瑞奈】
「アンタ……っ」


瑞奈は悲しそうに、悔やむように目を逸らすと、苦虫を噛み殺したような目を向けてきた。

――なんで貴女がそんな目を。
貴女が一番、私を疎んじていたはずなのに……っ。

どれだけ睨み付けても、瑞奈は……申し訳なさそうに目を逸らし、それが……。


【瑞奈】
「……ごめん、私……アンタの事見てなかった」

【瑞奈】
「悪かったなって言っとくわ……メリル」


彼女の後悔が、心に響く。


【メリル】
「え、あ……わ、私……私、は……っ」

【エリス】
「…………」


エリスはただ、微笑を纏ってメリルを……じっと、見つめる。
その目線に、一同から向けられる視線に、メリルは……弱々しく頭を振ると、ぎゅっと目を閉じた。


【メリル】
「あああああぁあぁぁぁぁぁあっ!!」


光が、溢れた。
メリルの身体を光が包み、それが、頭上へと収束する。


【瑞奈】
「なっ……メリルっ!」


光が、小さな丸を象り、輪となる淡い金色を放つ。
同時に、見開く目は辛そうに歪み、追従するように……白が広がる。

真っ白な翼。
羽ばたくように一つ震えると、抜け落ちた羽が一枚、ひらりと落ちた。


【メリル】
「わ、私は私だもんっ、私が……メリルだもんっ」

【メリル】
「何でそんな目で見るのよっ! 言えばいいじゃないっ、違うって……違うって言えばいいじゃないっ!!」


答えは、無い。
ただじっと見据える六つの瞳は攻めるでもなく、怒るでもなく……。

それは間違いなく、自分へと向けられる眼差しで。
あの子では無い、今の自分へ……メリルへと向けられた眼差しで。


皆、あの子ではなく……メリルを案じているんだと。
ここに居る自分を見ている事が、誰より、それを向けられる自分が理解できて……。

 

【メリル】
「う……うわあああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

どくん、と。
何かが震えたような気が、した。

振り上げた両手に、力を込める事ができない。
その剣を、振り下ろす事が……できない。

――大丈夫だと思っていた。
誰が相手でも敵だと思える、ずっと、ずっと……。
私が居るためなら、誰でも許さないって、そう思っていたのに……。


【メリル】
「ママ……先生、瑞奈……」


いやだって、思ったんだ。
あの子が……あの子だけじゃなくて、誰よりも私が。
私の身体が、心が……魂が、全部拒絶した。


【メリル】
「…………」

【メリル】
「……ムリ、だよ」


がらん、と……。
先ほどより大きな音を立てて、剣が落ちる。


【メリル】
「皆……いい人だから……私、ずっと……嫌な顔されたら笑ってやるって、そう思ってたのに……」

【メリル】
「皆、私にも微笑んでくれて……あの子の居場所、簡単に……私の居場所にできちゃって……」

【メリル】
「これだけで幸せって、思ったから……私もう……ワガママ、言えないくらい……」


受け入れられたら、逆らえない。
私はもう、誰にも……誰にだって、言うべき文句を持っていない。


【エリス】
「メリル……」

【メリル】
「ママ……私、ずっと……ずっとね、頭が痛いんだ」

【エリス】
「分かってます、私もそうでした」

【メリル】
「……私、あの子と話がしたい……どうしたらいいかな」


エリスはメリルに微笑みを返すと、そっとその身体を抱きしめた。
金色の髪を撫でながら、そっと、その手に意識を向ける。


【エリス】
「…………大丈夫、任せて」

【メリル】
「うん……」


抱き返す力を感じながら、撫でる手を止め一息。
乳白の輝きがメリルを包み、一瞬の静寂――。

光が消えると同時、力の抜けたメリルを抱き留め、エリスは、ゆっくりと目を開けた。

 

【瑞奈】
「えーと、どうなったの?」

【エリス】
「軽度の催眠法術です、眠っている間は身体も休まるはずですから……」

【エリス】
「後はあの子の心、あの子達の心の問題です」

【エリス】
「次に目覚める時はきっと、上手く纏まってるはずです……」


そう言って、抱き留める手に力を込める。
安らかな寝息を繰り返すメリルに語りかけるように、その姿を見つめながら……。


【エリス】
「メリルは……私より、上手に折り合いをつけると信じてます」

【エリス】
「メリルは私より優しいから……メリルは、レイさんの血も受け継いでいるのだから」

【エリス】
「きっと、大丈夫です」


そう言って、微笑む。
……その笑みが、何処か寂しそうに見えて……瑞奈は何も言えなくなる。

そういえば……メリルの母親であるこの人も、メリルのようにもう一人の自分と会ったのだろうか。
だとしたらその時はどうやって……その時は、どんな結末を迎えたのか。

沸き上がった疑問を、問えない。
そんな……過去を思うような、笑みだった。


【エリス】
「ただ……別件で少々気になることが」

【瑞奈】
「え?」


そう思ったのは、一瞬。
次に浮かんだ笑顔は……何処か不安を抱いているように見える、未来へと向けられた小さな苦笑。


【エリス】
「もしもの時は……二人とも、手伝ってくださいね」


その言葉にアリシアが小さく頷く。
状況を読み込めないまま、瑞奈はエリスとメリルとを見比べた。

よく似ている。
微笑むエリスと、眠るメリル。

その、エリスの笑顔と言葉に、まだ終わったわけではないと気を引き締め、一息。
でもまあ、もう少し……もう少しだけ、このまま何も考えずに立っていたい。

そんな事を、メリルを眺めながらふと思う。

安らかな笑みと、広がる翼。
比喩ではなく、本当に天使のような寝顔を眺めながら……。

 


+次回予告+

 


漆黒に染められた『メリル』の意識。
冷たく、暖かい空間に抱かれながら、メリルはぼんやりとメリルを思う。

メリルなら、大丈夫。
今のメリルならきっと、皆とも上手くやれる。

不安が杞憂だった事に心からの安堵を覚えながら、無限の暗闇へと落ちていく。


――それでいいの。
――本当に、それでいいの。


声が聞こえた。
無限の闇を裂く声に、メリルが心を動かす時。


無限が、夢幻へと姿を変える――。


次回、第十七話『夢の空、現の月-二人が得た物-』


「……っ、メリル貴女のこと知ってるっ! ずっと昔から……ううんっ、ママのお話で……っ!!」


夢幻なる純白の空の下――始まりを告げる声がする。


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クマヘッドとゼウ子
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性別:
男性
自己紹介:
・クマヘッド
PLじゃなくてクマヘッドってキャラがブログ書いてると思ってくれよ、なあ諸君。

・ゼウ子
クマヘワールドの切り札幼女。
無口で大人しくて無知でクール、色んな意味でツッコミを入れざるを得ない。

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