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バベルタワーのてっぺんで

メリル(Eno.52)が冒険している様を観客席から眺めているるクマヘッドとゼウ子があーだこーだ文句言ったり記録したり落書きしたりおっぱいおっぱい騒ぐ場所。

2024/11/21 (Thu)

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2007/03/29 (Thu)

20日目日記退避

(そのままコピペしただけザマス)
(後日過去ログと共に整形したのアップする予定だけど何時になるやら)



 ――何処までも広がる暗闇。
 意識と無意識の狭間、精神の潜む空白領域。
 上下も左右も無く、時さえも存在しない完全なる黒。

 『メリル』は、そんな情景をぼんやりと眺めながら、ふわふわとそこに漂った。

 自分が此処に居るという事は、メリルも眠っているのかな。
 ……眠っているはずだろう、ママが、そうしたんだろうな。

 そんな事を思いながら、ゆっくりと瞼を下ろす。


 安心したと、そう思った。


 メリルと変わる、その約束が現実となる時一番不安だった事柄。
 思ったことはなんでも口にする彼女が、自分のことを嫌っている彼女が、何か酷いことを言わないだろうかという不安。

 周りの人がどう思うか、皆と、どんな風に接するのか。
 誰かに嫌な思いをさせたりは、しないだろうか。

 抱いていた不安は、全部、自分の空回りだった。
 ううん、皆が凄く……優しかったんだ。

 戸惑っているメリルに、笑顔を向けてくれた。
 あの子の言う言葉に、自分を相手する時と同じように接してくれた。

 あの子を、認めてくれた。

 今思えば当然なそれを、心からありがたいと、そう思った。


 このまま眠ってしまおうと、そう思った。


 ――もう、思い残す事なんて無い、と。
 それならあの子も、幸せになれるはずだ、と。
 メリルなら、きっと耐えきるだろうと。


 そう、思った。
 そう思おうとしていた。

――それで、いいの?

 何も無いはずの暗闇に、声が響く。


第十七話
夢の空、現の月-二人が得た物-


……誰?

 メリルは辺りを見回しながら……そこに、何の変化も無いことを訝しがりながら。
 声がしたかもしれない、と思えた方角に目線と声を投げかけた。

 反応は無い。

 ただただ闇が広がって……そこには、何も見えやしない。


――メリルは、それでいいの?


 声だけが、無から跳ね返る。


……駄目だと、思うかな?


 聞き返した。
 質問に質問で返すのは、そんな風に言ったクマの顔が一瞬浮かぶ。

 メリルでもイイ、そんな風にクマも言っていた。
 それなら、きっとそうなんだろう。

 変わった所で困る人が居ないのなら、イイと思う。


――少しでもイヤだと思ってるなら、駄目。


 透き通るような声が、耳に届く。


――諦めるのは、良くないから。


 視線の先、変わらぬ景色の先に居るだろう声の主から目を逸らすように、俯く。


メリルは……。
メリルは、そんな風には思って……。


 無いよ、と……言えなかった。
 ただ、一言。


……仕方ないよ。


 そう、返す。


……ホントはね、メリルも皆と居たいって思うよ、でも……。
二人とも表に出るのは、無理だから。
それなら、メリルは……メリルの中で皆の居れたら、それでいい。


――本当に、いいの?


……メリルは……メリルにも、幸せになって欲しいから。
皆だってメリルの事、嫌いじゃないみたいだし。
それなら、メリルでも大丈夫だって、思うから。


 返事が消える。
 ただ、小さく……本当に小さく、溜息を吐くような音が、耳に届いた。

 その瞬間……世界が、真っ白い光に包まれて……。

【メリル】
「え?」


世界が、反転した。
上も下も純白、何処までも広がる真っ白な世界。

そこに、小さな椅子とテーブルと、映し出される世界の景色……。


【メリル】
「あっ……」


――パパだ。
映し出された世界の中、パパが長い剣を振り回し、目の前の人に切りつける。

一撃は受け止められ、弾かれ……押し返される勢いそのまま、砂浜に転がる。
それでも、何度打ち払われても立ち向かって、その顔は真剣そのもので……。


【??】
「……レイは、決して諦めなかった」


声が聞こえる。
揺れていた椅子が動きを止めて、座っていた人が振り向いた。

まだ子供……かな?
瑞奈と、自分と比べてもまだ小さい身体と、真っ白な肌と、長くて綺麗な赤い髪と……髪で隠れた顔。

なんとなく、何処かで会ったような気がした。


【??】
「……運命と言われても、不可能だと言われても……何があっても、諦めなかった」

【??】
「ただ皆と居たい……それだけを願って、立ち向かった」

【メリル】
「皆、と……」

【??】
「……メリルは?」

【メリル】
「え……」

【??】
「メリルは……諦める?」

【メリル】
「え、えっと……」

【??】
「誰かのために自分を消して……仕方ないと、笑える?」

【??】
「……メリルにも、声は届いたはず……それでも、自分を誤魔化す?」

【メリル】
「メリルは……」


思い出す。
メリルに告げられた、自分への言葉の数々を。

此処でメリルに全部譲れば、きっと……自分を叱咤するだろう人達を。

思い出すまでもない。
ずっと、頭の中では意識してた、戻って怒られるのもいいなって、そう思ってた。


それに、メリルだって……。


【メリル】
「メリルは……メリルも、皆と居たいよ……」

【メリル】
「でも、メリルがあんなに楽しそうだったから……メリルは、メリルの事も好きだから、えっと……」

【メリル】
「……どうしようって、思ってた」


二人とも、表に出る事は無理だから。
やっぱり……どちらかは、中に戻らないと、駄目だから……。


【メリル】
「……メリルは、どうすればいいのかな?」

【??】
「…………」


【??】
「……答えが自分の中にあるのに、聞くの?」

【メリル】
「あ……」


どくん、と……心臓が、ううん、身体全体が震えたような気がした。


【??】
「誰かに認められないと、何もできない?」

【メリル】
「…………」


多分、図星だと思う……。
メリルは……誰かが大丈夫って言わないと、駄目だった。

自分の判断で動いて、その結果……駄目になるのが、怖いから。
自分の所為で、誰かが嫌な思いをするのを嫌だって思ってたから……。

今までずっと、今は特に、そう思って……。


【??】
「……メリルは、自分を隠しすぎる」

【??】
「もう一人のメリルが、何でメリルが苦手だったのか、メリルの中が嫌だったのか」

【??】
「……分かった?」

【メリル】
「……うん」

【メリル】
「メリルが皆と話してるのを見てたら、なんとなく……」

【メリル】
「メリルがすぐ隠しちゃうから……思ったこととか言わなかったり、メリルはすぐ誤魔化したから……」

【メリル】
「メリルは……メリルの中でずっと我慢してたって、分かった」


メリルは……我慢の限界だったんだって、思ったんだ。
中に居て、言いたいことは何も言えなかったから……その上でメリルが、何も言わなかったから……。


【??】
「…………」

【??】
「メリルは、メリルの思った通りにすればいい」

【メリル】
「……大丈夫かな?」

【??】
「……知らない、それでも……自分を隠すより、そっちがイイ」

【メリル】
「…………」


――ひとつだけ、ある。
もしかしたら……メリル達が二人とも幸せになれる、とっておき。

今すぐにはできない事。
何年かかるか、わからない事。

メリルが頑張らないといけない、メリルがずっと望んでいた未来の形。


【メリル】
「……頑張ってみるよ」

【??】
「…………」

【メリル】
「うん……メリルね、怖いけど……これが正解って、分からないから怖いけど」

【メリル】
「それでも……思った通りに、やってみる」

【??】
「…………」

【??】
「……夢は現より生まれし幻の偽り」

【メリル】
「え?」

【??】
「覚えてて、メリル……夢は味方にはなれないから、最後は、現実がメリルを助けるから」

【??】
「後悔しないで……ずっと笑ってられるよう、諦めることだけはしないで」

【??】
「私はもう、メリルには何も出来ないから……それだけを此処から、願ってる……」

【メリル】
「え……っ、あっ! あぁっ、そうだっ!」


――思い出した。
何処かで会ったことがあるって思ったけど、そうじゃない。

メリルは、知ってたんだ。
この人のこと、ずっと……ずっと。


【??】
「……夢の中の夢は幕を閉じ、止まっていた時が回り出す」

【??】
「始まりを告げよう……取り戻した私の名にかけて、世界に眠りを与えよう」

【??】
「神位第二位――夢神の名の元に」

【メリル】
「……っ、メリル貴女のこと知ってるっ! ずっと昔から……ううんっ、ママのお話で……っ!!」


ずっと昔から何度も、何度も聞かされた。
パパとママと、もう一人の女の子との冒険譚。

ずっとパパの側に居て、ずっと、その姿を隠していて……。

だけど本当の姿は……本当は、ずっとパパの事を……。


視界が滲む
包み込む白が無限に代わり。
無限が、夢幻へ移ろい揺れる。


【??】
「さあ――物語をはじめよう」

【メリル】
「待ってっ! えーっと……アン――」

【??】
「――目覚めて、メリル」


メリルの言葉は白に溶け
純白は、夢の闇へと落ちていく……。

「…………っ!?」


目を開けば、そこには……満天の星空が広がって。
輝く満月を見上げると――そこに居る人影と目が合った。

風に広がる金の髪と、同色の瞳。
ずっと側にいて、言葉だけを交わしていた……一度も見たことの無かった、もう一人の……。


「メリル……」


「……こうやって面と向かって話すのは、初めてね」


メリルは、呼びかけに小さな微笑を浮かべると、そっと目を閉じ言葉を返す。


「うん……そうだね、ちょっと嬉しいかも」


メリルは笑みを返しながら、違和感を感じた腰へを手で撫でる。
ポケットの中に……何かある?


「……嬉しい、か……あははっ、奇遇ね」
「なんでだろう……私も嬉しいの、貴女のこと嫌いだって思ってたのに」


それを確認するより先に、メリルの言葉へ顔をあげる。
そこには、本当に楽しそうに笑むメリルの姿。


「…………」


「……『メリル』、私ね……やっぱり、貴女のことは嫌いだよ」
「身体を変わって再確認、私ね……貴女のこと、凄く羨ましいって思ってた」
「貴女みたいに皆と話したいって、そう思って……身体変わってって言ったけど」
「でも、そのまま貴女になれるはず無いって、分かってた」


「メリルみたいに……」


「そう、無理に決まってるのにね、馬鹿だったなー……」
「……でも良かったよ、やっぱり……言いたいことも言えたし、すっきりした」
「それに……皆ね、メリルじゃなくて私を見てくれたんだ……これは、言わなくても知ってるか」


「……うん」


「私は、貴女にはなれなかった……けどね、メリルにはなれるんだって、分かったから」
「皆が私に、沢山の声をかけてくれたから……」
「私は負けないよ、貴女にも……運命にも」
「正直ね、頭痛は酷いし身体も痛いし、隠すの大変なくらい身体は合わないけど……今までみたいに、我慢する」
「全部、全部乗り越えて……貴女に戻らないといけない理由なんて、無くしちゃうよ」
「諦めないって決めたから――私が私で居られるよう、奇蹟だって起こしてみせる」


メリルは笑顔を……満面の笑みを月の逆光に隠しながら、メリルを見下ろす。
その顔が、スッキリとした表情に……迷いがないなって分かって、思わず、メリルも笑みを浮かべた。

やっぱり、メリルはメリルの事も好きだから。
これからする事は、怒られるかもしれないけど、でも……。


「…………」
「ごめんね、メリル……メリルね、メリルに変わってイイって、言ったよね」
「あれ……やっぱりヤダって言っても、いいかな」


「…………」


「……ホントは、やだったの……メリルに変わるの、仕方ないって思うようにしたけど」
「メリルが色々言いたい事あるの、知ってたし……ヤだった」


「……知ってたわ」


「……でも、そんなメリルだったから、メリルが嫌だって思ったの、分かったから」
「メリルが嫌だったのは、すぐに誤魔化しちゃうメリル、なんだよね」
「ごめんね……メリル、さっきも誤魔化そうとしてた……全部メリルに譲って、それでイイって思っちゃう所だった」
「今度こそ、メリルに嫌われたまま……消えちゃう所、だったよ」


「…………」


「これからはウソはつかないでいようって思った、メリルが嫌だって思わないようにするから、だから……」
「ごめんね、やっぱり……譲れない」
「ワガママだって分かってるけど、でも……」


メリル達のために、一番いい事でありますように。
今はまだ分からないけど、でも、いつか……メリルも、笑顔で認めてくれますように。

それだけを思って、メリルを見上げた。


「いいよ……今、貴女が言った通り」
「身体の取り合いになるのは厄介だけど、私が何が嫌だったか分かってくれたみたいだし、十分よ」


「……うん」


「最も、譲る気は無いけどね……どうするのメリル? この状況、貴女はどうやって戦うの?」


メリルは笑みを浮かべながら、手にした剣を掲げて見せた。
空に浮かぶ満月と重なるように、銀の剣と鎧が光る。

対するメリルには……いつも着ている服が、一着だけ。
武器と防具、最初の取り合いはメリルが有利――精神的に負けていると、そういう事だ。


勝利を確信した微笑。
メリルのそれを見上げながら、メリルは……ポケットの中にある、それを握る。


「…………大丈夫、だよ」
「今日なら特別……月が、こんなにも綺麗だから」

「月? ……満月ね、確かに綺麗だわ」

「――違うよ、メリル」
「夢は現より生まれし幻想の偽り……どれだけ満月に見えても、現実の月は違うから」
「此処は夢の中だから……大丈夫」


ポケットから取り出したそれを、掲げる。


「メリルには……現実の月が分かるから」


青い石の真ん中で、膨らみかけた月が揺れていた。


「――月齢時計」


「今日は満月じゃなくて、現実の月は『膨凍月』……世界中の冷気が膨らむ、凍える夜」
「瑞奈が、教えてくれたんだ……」


静かに目を閉じ、息を吸う。
広げた手に集まるモノ、魔力ですら無い、純粋なる【属性】、冷気が固まり、型を成す――。


「――アイスウェポンっ」


一吠え。
象られた剣を――凍りの刃を振り上げ、空を見る。


「メリルも、刃向かうよ」
「メリルと、運命と……全部、メリルとメリルが、幸せになれるように」
「今なら……何処までもいけそうな気が、するもん」


その声に合わせて翼を開く。

漆黒に染まる二つの翼。
頭から、そして……腰から生えた二対四翼。

――魔翼。


「…………」

「…………」


一瞬の静寂。
無音と化した夢の中、じっと、二人の視線が混ざり合う。

そっと、目を閉じ。
笑みと共に、瞼を開く。


「……私は、私で居るために」

「メリルは、メリル達が笑える明日のために」


蒼なる銀が世へ駆け上がり。
白銀が刃を振り下ろす。

夢夜の月に照らされながら……――

「「負けないからっ!」」

――銀色と銀色が、交差する。


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クマヘッドとゼウ子
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性別:
男性
自己紹介:
・クマヘッド
PLじゃなくてクマヘッドってキャラがブログ書いてると思ってくれよ、なあ諸君。

・ゼウ子
クマヘワールドの切り札幼女。
無口で大人しくて無知でクール、色んな意味でツッコミを入れざるを得ない。

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